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嗚呼、泥沼回顧録

其の七拾四 ~猫莫迦日記~

山田晃士 ~猫莫迦日記~
愛猫MARIE。
彼女もいつの間にやら16歳。
猫としてはかなりの高齢。
立派なおばあちゃんだ。

いつも世話になっている獣医から連絡があり、
横浜市が高齢のペットを表彰してくれるというので、
師走の日曜日の昼間、区役所へ行ってみた。

6階の会議室。
微笑ましいスタッフ&飼い主さん達がおよそ30名程。

1人づつ順に表彰されてゆく。
やがて”MARIEちゃんの飼い主の山田晃士さん、どうぞ前へ”
あたたかな拍手の中、表彰状と盾を受け取る。
いやはや何とも、面映い。
私の舞台からは程遠い世界だ。
不覚にも嬉しさを隠せない自分。

間もなく表彰式が終了、
さて帰ろうかと思った矢先!
”は~い、ではこれから福祉施設を動物達と一緒に慰問するボランティアの勉強会を始めま~す”と笑顔のおねいさん。
成程…狙いは其処か。
私は嵌められたという訳か。
話の内容うんぬん以前に、
何故勉強会の事を知らせていないのか、それが問題である。

その昔従兄弟に昼飯を奢るからと呼び出され、
食事の後、マルチ商法の説明会に連れて行かれた事を思い出した。

私は甘かった。
真の狙いを見抜かなければ。
浮き世を儚む暇等無いのだ。

それでも私の部屋の壁にはMARIE宛の表彰状が飾られている。
生っ粋の猫莫迦である。

其の七拾参 ~秋眠暁を覚えず~

山田晃士 ~秋眠暁を覚えず~
寝るのが大好きだ。

許される事ならば毎日十時間以上眠りたい。
勿体無い なんてちっとも思わない。
“眠れな い”のは私にとって殆ど恐怖である。

不眠とは程遠い私にも、赤い目を擦り朝を迎える事がある。
理由は様 々。

例えば“失恋”
その昔心 底惚れていた女性に完膚無き迄にふられた時、
一ヶ月近くまともに眠る事が出来なかった。
女々しい という言葉は男の為にあるんだと知った。
最終的に は酒の力をかりて眠った。
浜省の歌の様に“ギター抱えて眠った”事は未だかつて無いが、
“酒瓶抱えて眠った”事はある。
ぼーっと、死んだ魚の目で、魂の抜け殻となり、早く季節が変わって欲しいと願う。
むむぅ。 美しい思い出だ。

例えば“屈辱”
身に覚え ない所でひどい仕打ちを受けた時、悔しくて悔しくて眠る事が出来なくなる。
文字通り泣き寝入る事が出来ない。
酒の力も効かない。逆に煽られてしまう。
聖書の様に“右の頬を打たれたら左の頬をも差し出す”のではなく
“目には目を、歯には歯を”の自分が抑えきれない。
苛立った り、悲劇の主人公になったり、世界を破壊したい衝動にかられたり、
体力・精 神力共にかなり消耗する。
むむぅ、 醜い思い出だ。

寝るのが大好きだ。

だがしか し唄という表現は、
眠れぬ夜の中で磨かれたりもする。

非常に厄 介だ。

其の七拾弐 ~天国と地獄~

山田晃士 ~天国と地獄~
ガレージシャンソン歌手、遂に登山デビュー!!!
今まで数々のドタキャンを繰り返し、呆れられた私だが、
満を持して泥沼山岳部<Drロジャー高橋、Tp渡辺隆雄>に入部。
神無月中旬、登山を敢行した。
北八ヶ岳は西天狗岳・東天狗岳に登って来た。
しかも黒百合ヒュッテに一泊と本格的な山行である。
大丈夫か?自分。
さて当日は雲一つない快晴。
メンバー曰く“山の神様が味方している”との事。
お調子に乗った私は“楽勝~”と意気揚々に歩き出すも束の間、
一時間もしない内に動悸・息切れを訴え、早くも『挫折』の文字が頭をよぎる。
だがしかしもう戻れない。だって皆行っちゃうんだもん。
美しい毒キノコやびっしりと覆った苔に励まされ、
登る、登る、登り続ける、滑る、転ぶ、又登る。
嗚呼、呼吸がままならん。
手足の指先が痺れて来た。
これは軽い酸欠だなぁ…。
それでも登る、登る、登り続ける。
正に“ぢごくのくるしみ”であった。
ぢごくをくぐり抜けやっとの思いで頂上に到達。
そこで私が見た景色とは…!
下界とは次元が違う、
そこに己が立っている事が信じられぬ程の壮大さ、美しさ。
一体ここはドコ?一体これはナニ?
眼下に広がる雲海。 神々しく連なる山々。
見つけたぞ、何を?永遠を。
正に“あの世”であった。
そう、私は一日にして天国と地獄を味わったのであった。
これぞROCK…。
その晩は貸しきり状態の山小屋で泥酔し、満天の星空で流星群に包まれ、
その日卸したばかりの羽毛布団で眠った。
帰り道はカモシカちゃん達に遭遇。
また近い内に“ぢごく”と“あの世”を体験したいと願いつつ下山。
山の神様に感謝致します。
アーメン。
泥沼山岳部万歳!!!

其の七拾壱 ~無邪気な子供達~

山田晃士 ~無邪気な子供達~
先日、日帰り温泉へ行った時の事。
連休中のせいか、やたらめったらお子様が多かった。
基本的に子供は嫌いじゃない。
その無邪気さを見ていると微笑ましくもなる。
但し、何事も程度が大切だ。
その日私はひとり静かにゆっくりと風呂に浸かりたかった。
のんびりしたかった。
だがしかし…
水風呂は少年達のプールと化し、
打たせ湯ではガマン大会が繰り広げられ、
寝湯ではくすぐり合いに身をよじらせ、
露天風呂は公園宛らであった。
やれやれ、今日はゆっくり出来そうにないな…。
浴室から上がろうとした私の目に奇怪な光景が飛び込んで来た。
洗い場を走って行く4才位の男の子からポトリと何かが落ちた。
黒っぽい小指大の物体。
嫌な予感…。
わたしはそそくさと脱衣場へ。
しばらくして浴室内から子供達の絶叫が響いてきた。

しばらく公衆浴場へは行く気になれない。

其の七拾 ~網棚のギター~

山田晃士 ~網棚のギター~
八月中旬。
まさしく猛暑。
新しいセッションのリハーサルへ向かう。
お盆のせいだろうか、駅のホームには人影もまばら。
黄色い線の上で蜃気楼が揺れている。
背中を滴り落ちる汗。
アナウンスと共に各駅停車が滑り込んで来る。
少ない乗客。
強力な冷房。
束の間の白日夢。
気付けば誰もが物思いに耽っている様だ。
まるでこの車両だけ世界から取り残されたみたいに。
網棚に乗せたギターだけが私を繋ぎ留めてくれている。
さあ、新しい音は私を何処へ連れて行ってくれるのだろうか。

其の六拾九 ~夢の島リサイクルショップ~

山田晃士 ~夢の島リサイクルショップ~
家の近くにリサイクルショップがある。
箪笥、テレビ、ソファー等、大きな商品は夜中も外に出っぱなし、
雨ざらしの冷蔵庫が2000円で売られている、
そんな店だ。
ハッキリ言って商品の殆どがゴミ同然。
おお、此処は夢の島なのか。
その一つ一つに¥300、¥500と値札が貼られているのである。
値段設定もまるで根拠無し。
なかなか面白い。
”ビデオテープ各¥500”と書かれた段ボールには、普通の家庭用生テープが何本も入っている。
一体何の映像が録画されているのだろうか。
気になる…。
先日その店に新しい貼り紙が出されていた。
本来販売業にありがちなのは
”万引きは犯罪です”
だがしかしその店ではこう書かれていた。
”不法投棄は犯罪です”
知らぬ内にに商品が入荷していたのだろうか。
おそるべし。

其の六拾八 ~そんな気分~

山田晃士 ~そんな気分~
髪を切った。
バッサリと。
腰まであった黒髪は顎のラインで揃えられた。
五分前迄はそんなつもりはなかった。
美容院で急に“そんな気分”になったのだ。

“そんな気分”は突然やってくる。
明確な理由がない。
太刀打ち出来ない。

今考えると
女の子と別れたのも
帰り道を変えたのも
バンドを解散したのも
引っ越しをしたのも
所属事務所を離れたのも
“そんな気分”に寄るものかもしれない。

“そんな気分”の積み重ねで
私は人生を棒に振ってしまうのかも知れない。

“そんな気分”の後はやわらかな後悔をする。

髪を切った私は
まるで素っ裸みたいに恥ずかしい。

其の六拾七 ~味わい深く~

山田晃士 ~味わい深く~
遊園地。
門をくぐればそこは夢の国。
日常から非日常へと、
少年の私の胸は高鳴るのでありました。
”好きな女の子と遊園地でデートする”
これ以上のシアワセがあると言うのでしょうか。
多摩川園・としま園・花やしき・ドリームランド…
まだディズニーランドがなかった頃の、
淡く切なく、ちょっぴり物哀しい思い出。

ループもスクリューも無いジェットコースターで手に汗握り、
見せ物小屋みたいなお化け屋敷で悲鳴を上げ、
塗装の剥げたコーヒーカップで目を廻し、
軋んだ音のする回転木馬に揺られて…。

今思えば”郷愁”こそが
遊園地の最大の魅力だったと思う今日この頃。

昨今、遊園地に限らず娯楽は
映画にしても音楽にしても
より強烈な、より過激な”刺激”を追い求め
そのインパクトといったら凄まじい。
一体何処まで行くのやら。
麻薬と一緒だぜ。
効き目がなくなるぜ。

私は”味わい深く”唄いたい。
より強烈に、より過激にな。

其の六拾六 ~江ノ島旅情~

山田晃士 ~江ノ島旅情~
柄じゃないのだが無性に海が見たくなった。
江ノ島でも行くか。
横浜在住の私にとって江ノ島はお気軽リゾート。
幼い頃は家族で、中高生の頃は好きな女の子と、
車の免許をとってからはドライブで、と思い出も多い。
江ノ島独特の何とも言えぬノスタルジックな雰囲気が好きだ。
いくつか新しいスポットが出来たり、
遊歩道が整備されたりしたけれど、時代は止まったまま。
江ノ島は変わらない。
”エスカー”を乗り継ぎ島中央へ。
ちなみに”エスカー”とは単なるエスカレーターの事。
これが結構なお値段を取られる。
エスカー終点からは石段を昇り降りして先端の岩場へと。
その道すがら食堂に立ち寄りちょっと休憩。
ビールと焼きはまぐりを食す。嗚呼、至福なり。
幾つかの鄙びた民宿もある。
お客さん来るのかなあ? 泊まってみたいなあ…。
興味津々。
江ノ島の野良猫達はみんな丸々と太っており、
悲壮さの欠片もない。自由気侭で幸せそうだ。
岩場でごろんごろんとひっくりかえる三毛猫を発見。
30分眺めた。猫になりたいぜ…。
ガレージシャンソン歌手は何処へやら。
ちょっとしたきっかけで、名前も変えて、過去も捨てて、
民宿で住み込みで働いている自分を妄想してみたりする。
アブナイ、アブナイ。
さあ帰らなくちゃ。
下りはエスカーないんだよな…。

其の六拾五 ~泥まみれ 雪まみれ~

山田晃士 ~泥まみれ 雪まみれ~
弥生の上旬、75歳になる父と長野県は戸隠に行って参りました。
柄にも無くスキーなんぞやってみたりして、
侮るなかれ、私の華麗なる”パワースキー”を。
頂上から直滑降&ボーゲンで一気に滑り降りるその不様さは、
舞台上でSHOUTする私と寸分変わらぬ佇まい。
不可能を”力技”でねじふせるのが私の美学。
むむぅ、燃費悪い…。
”泥まみれ”ならぬ”雪まみれ”の生き様を晒したのでありました。
水入らずでペアリフトに乗った気まずい親子。
到着する迄の数分間、会話は一切無し。
しかも戸隠スキー場にはBGMが流れておらず、
恐ろしい迄の静けさがふたりを包み込むのでありました。
雪山景色が厳めしかった…。
そしてもう一つの愉しみは蕎麦。
これがビックリする位旨かった。
天ぷらを齧り、日本酒を舐め、蕎麦をすする。
嗚呼、まさに至福の時。
何もかも親父の世話になりました。
スキーは指導員並みの腕前、よく食べ、よく呑み、一切を仕切る。
まるで年齢を感じさせない親父との旅を通し、
自分の愚かさを切実に感じている春の始まりなのであります。

其の六拾四 ~グズグズ ベシャベシャ ヌメヌメ ドロドロ ~

山田晃士 ~グズグズ ベシャベシャ ヌメヌメ ドロドロ
~
最近のカップ天ぷら蕎麦は決まってサクサク後のせ方式。
私はサクサク天ぷらを美味しいとは思えない。
底の方へ沈めてグズグズにしてから食べる。
汁の沁み込んだ衣が又旨い。

コーンフレークを久し振りに食べた。
ミルクをかけたらすぐには食べない。
スプーンで押さえて十分に沁み込ませ
ベシャベシャにしてからから食べる。
甘くなったミルクが又旨い。

家系ラーメンのトッピングは何と言っても海苔。
パリッとした海苔が醤油トンコツスープに塗れて
何枚も重なりヌメヌメになった固まりを食べる。
のどにへばりつく感触が叉旨い。

ハーシーのチョコレートシロップは何にかけてもイケる。
アイスクリーム、ビスケット、パン、白飯、etc。
チョコレートはドロドロに溶かしてしまいたい。
出来ればあなたの薬指の先に付いたヤツを舐めたい。
嗚呼、来年のバレンタインが愉しみだ。

其の六拾参 ~夢のあとさき~

山田晃士 ~夢のあとさき~
ツアー先の安ホテ ルの部屋。
知らぬ土地、あての無い散策。
移動中、過ぎ去る景色。
楽器車での沈黙。
バックステージの憂鬱。

”ナニヲシテイルノダロウ?”
”ドウシテココニイルノダロウ?”

舞台に上がる。
その理由がハッキリと分かる。
私は私を知る。

舞台がはねる。
そこに居た様に、そこから消えたくなる。
私は私を見失う。

夢のあとさき。